ヤツガタケノート

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2015.5.9
ようこそ、時間が止まるカフェへ

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60年代後半にアメリカ西海岸を中心に活躍したロックグループThe Lovin’ Spoonfulの代表曲に「Do You Believe In Magic?」(魔法を信じるかい)があります。

信じた人だけが感じることが出来る魔法。フィトンチッドに行くと魔法があるような感覚になったり、魔法を信じたくなったり、なんだか日常の忙しさがどうでもよくなってしまいます。

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フィトンチッドは廃校を利用したカフェです。須玉インターから約40分、増富ラドン温泉郷の手前、ちょうど夕日があたる谷間に、その場所はあります。
もともと、この場所は増富村の富里地区にある分校でした。学校といっても小さな集落の分校だったので、生徒数が限られていたのでしょう。その昔、武田信玄公が活躍していた戦国時代には隠し湯として負傷した武士が通っていた場所です。
昭和38年に廃校になってからは、地区の公民館として利用されてましたが、公民館としての役目も終えて、前のオーナーが森の遊び場フィトンチッドとして20年くらい使っていました。今でも、Google Mapには前の名前で掲載されていて、ナビで調べるのには重宝します。
オーナーの西川慶さんが増富に引っ越して来たのは昨年の4月。結婚を機にこの地に来ました。引っ越してきた家の窓から見えていたのが、廃校の校舎でした。「ここでカフェが出来たらいいな」、そう思っていたら縁がつながり、旦那さんが椅子やテーブルをつくってくれて、瞬く間に準備が整って、昨年9月に“新しい”フィトンチッドがオープンしました。
廃校になってから52年。時が経っても変わらない背の低い石の正門を過ぎると、平屋の木造校舎があります。校庭は奥行きが30mくらい。小学生が遊ぶにはちょっと狭い、庭のような広さです。
玄関で靴を脱いで、左手の小さな廊下の手前にある扉を入ると目の前にはコーヒーを淹れるカウンターがあります。黒板を背にした、カウンターは教室のちょうど後ろの位置。ランドセルを入れておく棚がある位置です。
中央には薪ストーブがあって、そばにあるソファーでは三毛猫がまるくなって寝ています。玄関にあった「三毛猫かみます!」の看板からは想像できないくらい、かわいらしい寝姿のジュピターは、カフェを開く前からの居住者。我が物顔で、大きなソファーを陣取っています。

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「じゃあ、ご自由にどうぞ」と案内された店内にはメニューが書かれた大きな黒板やオルガン、レコード、古本が並んでいます。沢木耕太郎「深夜特急」に、司馬遼太郎の時代小説、暮らしの手帖が監修した料理本があるかと思えば、自然農法のバイブルが並んでいたり、サイモン&ガーファンクルのレコードが立て掛けれられています。まるで生徒が勝手に持ち込んだような、誰が持ってきたのかを聞きたくなる品ばかりです。
教室を歩き回ること数十分。自分が生まれる前に廃校になった教室なのに、カラダが広さを覚えているような錯覚を覚えます。細い板張りの床が懐かしく感じ、なんだか落ち着くのです。これが魔法なのかも?そんなことを思っていたら頼んだコーヒーが運ばれてきました。

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「最終的な目標は、地元のおっちゃんとおばちゃんが来てくれること」
厳しい冬を越して、増富にも春が来ました。教室の窓から見える大きな桜の木は、何度この場所で春を迎えたのでしょう。
きっと、今年はフィトンチッドを目指してたくさんの人が、この場所に来るはずです。ここには来た人だけが手にすることができる魔法のような時間が流れています。午後2時から始まった取材は、気が付いたら陽が沈む時間になっていました。

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