「こころが静まるモノづくり」
富士見駅前商店街にある多目的スペース36(サンロク)の中に仕草の工房はあります。今回は植物を原料にした染料で手ぬぐいを染める染色家 佐渡勝行さんに「つくる」をテーマに話を聞きました。
―今号のテーマは『ぼーっと、ヤツガタケ』なのですが、佐渡さんには、ぼーっとする間もないくらい神経を使うであろう、手ぬぐい作りを通して、日々感じている“つくる”ことについて伺いたいたいと思います。宜しくお願いします。
佐渡(以下S):でかいなぁ~テーマが。宜しくお願いします。
―出身はどちらですか?長野に移住してきたのは、いつ頃ですか?
S:出身は千葉県で、移住して6年目。最初は長野県上田市に住んで工房を構えていて、2年前から富士見町に来ました。
―染め始めて何年になりますか?
S:はじめて13年くらい。はじめは植物染めでTシャツをつくってイベントで売っていて、それから今の染め方をやっているの工場に入って働いて独立を機に長野に移住しました。
―今やっている染色の技法は、どんな方法なのですか?
注染(ちゅうせん)という方法で、昔から手ぬぐいや浴衣を染める技法として使われていました。今も工場があって職人さんが作り続けています。うちは染料が植物由来なのが特徴です。
―“つくる”ことについて日々心がけていることなどあれば教えてください。
S:売れることを意識していた時代もあったけれど、それでは長続きしないと気づき始めていて、違う方向に舵を切り始めている感じです。作品って、認められたい、ほめられたい、名誉欲みたいな…。今は全然逆の方に向かっている気がしていて、どちらかというと自分の作品を見た人の欲望を掻き立てるのではなく、心が静まるようなものを作りたいと思っています。
―手ぬぐいをデザインしたり、つくる上で気をつけていることは?
S:手ぬぐいは作品がいきなり日用品になるから、それは幸運なことなのかもしれないけれど、日用品をつくる心得を忘れてはいけないと思っています。自分の想いを表現するただのキャンパスではなくて、日用品だからこそ使う人のことを考えてデザインをしていく。そこが面白くもあり、難しいところかな。
―これからについて。展望など考えていることはありますか?
S:売れるものをつくろうとすれば、どんどんポップにしていけばいいはず。そういう目線でいったら簡単なのかもしれないけれど、ものづくりをしている動機は、身近な人を大切にすることが大前提。その延長で作品が成り立っている感じだから、これからはシンプルだけど、身近な小さな世界を大切にしながらも、楽しむことを一番の目標にしたいですね。
「つくる」を大切にすることが、使う人に伝わる品を作る第一歩なのかもしれません。今回、手ぬぐいから感じる「やさしさ」の秘密を知れた気がしました。