取材にうかがったとき、実はお店の近くまで来ても少し迷ってしまいました。「手打ちそばのお店」と思って探していたのですが、それらしい建物が近くになかったからです。「おそば屋さんらしい暖簾とかないよね?」なんて思いながら、ふと目の前のカフェのようなお店を見ると、そこには「そば」の文字。ブリティッシュな店構えだけれども、ここが地元でも評判の手打ちそばのお店「香草庵」だったのです。
正直にいうと、お店を見たとき、ちょっとドキドキしたりもしていました。やっぱり、本格的な手打ちそばをやっているお店といったら、和のイメージですから。こういうお店だとどんなおそばが出てくるんだろうという不安があったんですね。
でも、出てきたお店の名物「ぶっかけ」を食べてビックリ。冷やしてしめたおそばに、もり汁をかけて食べるというちょっと珍しいスタイルなのですが、そばも、上に載ったすずしろや揚げ玉なども、西京味噌を溶かしたもり汁も風味が抜群なんです。
取材に行っている私たちも、長野の人間。そばは小さい頃からおいしいものを食べ慣れてきた方だと思うのですが、ここのそばは今までに食べたことのない味と食感。なのに、すごく“そばらしさ”があって、どこかで懐かしさを感じさせてくれるのが不思議でした。
信州人をうならせるおそばをつくっているご主人は、実は関西の出身。10年ほど前にお店を始めるときを決めてからそばの修行を始めたといい、「(腕は)今でもまだまだよ」と笑います。
でも、言葉とは裏腹に素材からつくりかたまでこだわっているからこそ、この味をつくれるもの。地元産のそば粉にこだわり、自分でもそばの栽培を手がけるようになったのは本誌でも触れたとおり。さらに、製粉も離れの製麺小屋で行っており、メニューに合わせてそば粉のひき方を変えたりもしているんです。
印象的だったのは、おそばをいただいたときのこと。取材ということで食べる前にまず写真を撮らせていただいていたのですが、写真を撮っていると「お、写真先撮ってるの? のびちゃうから早く食べて食べて」と人なつっこい笑顔で話しかけてくださいました。
「腕はまだまだ」なんて笑うご主人ですが、「本当においしいものを食べて欲しい」という気持ちが強いんだなぁと、食べる前から感心してしまいました。
遠くからでも食べに行きたくなる絶品のこだわりそば。ぜひ一度食べて欲しい一品です。年末は年越しそばの受け付けもしているそうなので、今年は香草庵のそばで年越しもいいかもしれません!(要電話確認)