JR中央本線富士見駅から10分ほど歩いたところにあるイタリアンレストラン「osteria agiato」。
駐車スペースから店の入り口に向かって進むと、だんだんとパノラマ写真のような景色が広がっていきます。このお店はちょっと高台のような場所にあり、目の前には八ヶ岳、眼下には周辺の家々が見下ろせる、絶好の見晴らしなんです。
大きな木の植えられた庭を、草を踏み分けて進むと、たどり着くのは古民家を改築した建物。やわらかな木の色と少し鈍い鉄の色……きれいだけど、人が使ってきた年月を感じさせる建物と家具が独特の雰囲気を醸し出しています。ひとつひとつのカットがまるで映画やドラマの1シーンのようでした。

普段はまじまじと店内を見回すことなんてありませんが、このお店に入ったときは、料理を待っている間に、ついいろいろなところを見て回ってしまいました。天井、壁、照明、テーブル、椅子、窓など見ているだけでなく、触ってみたくなるのが不思議なところです。

「agiato」の雰囲気をつくっている、もう一つの特徴はその広々としたレイアウト。古民家を改装したお店なので、それなりの広さがあるのですが、テーブル数は5つほどだけなんです。広い店内を贅沢に使わせてもらっている感じで、ゆったりとした気分で食事をさせていただきました。

このお店のランチメニューは3種類程度のセットとコースのみ。メニュー採れる野菜や食材によって変化していきます。
私も取材後も個人的に足を運んだのですが、行ったときは必ずコースをオーダーしています。セットで出てくるパスタも、フォカッチャもデザートも美味しいのですが、コースだけについてくるメインの料理が絶品なんです。本誌でも掲載しましたが、「信州福味鶏のソテー」はビネガーソースの酸味と肉の甘味の組み合わせといい、パリっとした皮の食感といい、最高！　「ここでメイン料理を食べないわけにはいかないでしょ」と思っています。
料理の盛り付けも美しいので、食べる前から楽めるのもお気に入りのポイントです。

そして、このお店でいつも感心してしまうのが、料理が出される「タイミング」。
「食べるのをずっと見てたんですか？」というようなタイミングでお皿が下げられ、次の料理が出てくるんです。次の料理まで時間が開きすぎることもなく、せかされることもなく、ゆったりとした絶妙のタイミングで温かい料理をいただくことができる。
これこそがオーナーシェフの岡本さんの「おもてなし」。「自分が目の届く人数のお客さんに料理を最高のタイミングで出せるように」という岡本さんの気持ちが、このお店の「ゆったりとした雰囲気」をつくっているのでしょう。

特にその思いが詰まっているのが、ディナータイム。
「agiato」では、ディナータイムはなんと予約のみ、1組限定でお客さんを迎えているんです。「自分の最高のおもてなしをしようと思った」と岡本さんは話してくれましたが、ここまで徹底してくれるお店はなかなかありません。建物、景色、料理、そして人、すべてが贅沢なお店だと感じさせてくれます。
小さいお店だからこそ味わえる、岡本さんのこだわりが詰まったこのお店に、ぜひ行ってみてください。
あ、地元でも人気のお店ですので、お店に行くときは、ランチタイムでも電話で空席の確認をしておくと安心ですよ。